アドオン金利と、実質年率の違い|キャッシングの用語解説
アドオン金利とは「金利の決め方のルール」です。そして、どんなルールかは、「普通の金利の決め方」と比較すると、よくわかります。
まず「普通の金利」は、下のように計算します。
- 「利率」を決める
- たとえば「1%」だったとする
- そうしたら「毎月、月末の借入残高」に「1%」を掛ける
- これが「利息」になる
ポイントは「月末の借入残高」という部分です。(月末とは限りませんが、要は「その月の残高」ということです)
例えば、あなたの借金が、下のように毎月減っていったとしましょう。(普通、減りますが)
- 1月…100万円
- 2月…90万円
- 3月…80万円
毎月、それぞれに1%を掛けるので、利息は下のようになります。
- 1月…1万円
- 2月…9000円
- 3月…8000円
これが「普通の金利計算」です。しかし、アドオン金利はこのようにならないのです。「減らない」んですね。
アドオン金利は「利息が減らない」
どういうことかというと、下の通りです。
- 毎月の利息を
- 「その時の借入残高」ではなく
- 「最初の」借入残高で計算する
ということです。
- 普通の金利…「月利10%」を、「今の残高」にかける
- アドオン金利…「月利10%」を、「最初の借入金額」にかける
このような違いですね。具体的な計算をしましょう。
*なお、月利10%というのは、ヤミ金融並に高い金利ですが、計算しやすいのでこれで行きます。
「100万円」借りて、月10万円ずつ返済したら?
100万円を借りて、月10万円ずつ「元本」を減らしたとしましょう(利息も払いつつ、元の金額を10万円ずつ減らしていくということです)。
そうしたら当然、月が経過するごとに、残高は下のようになります。
- 1ヶ月後…90万円
- 2ヶ月後…80万円
- 3ヶ月後…70万円
このような風ですね。そして、これらの金額に、月利10%をかけるので、利息は―。
- 1ヶ月後…9万円
- 2ヶ月後…8万円
- 3ヶ月後…7万円
このように、どんどん減っていくわけです。これも当たり前ですね。そして、これを全部合計すると、利息は「55万円」となります。
- 借りた金額…100万円
- 利息…55万円
ですね。これが「普通の金利」(実質年率)で計算した場合の利息です。では、「アドオン金利」で計算するとどうなるか。
- アドオン金利では、毎月の残高が「減っていない」という前提で、月々の利息を「最初に確定」させる
つまり、月々の利息が―。
- 1ヶ月後…10万円
- 2ヶ月後…10万円
- 3ヶ月後…10万円
となり、同じ「10回」で完済しても、利子総額は「100万円」となるわけです。並べると下の通りです。
- 普通の金利…利息「55万円」
- アドオン金利…利息「100万円」
このように、「ほぼ2倍」になるわけですね。
この「ほぼ2倍」というのは、この計算例だけではなく、アドオン金利だと常にそうなります。理由を説明します。
どうして「2倍」になるのか
図解すると、たとえば「借入金額」が―。
★★★★★
だったとします。スタート時点の借入金額は、当然どちらも同じです。なので、下のようになります。
- アドオン…★★★★★
- 普通金利…★★★★★
当たり前ですね。そして、普通金利の方は「毎月、残高が減っていく」という仮定なので、下のような仮定になります。
- ★★★★★
- ★★★★
- ★★★
- ★★
- ★
当たり前ですね。借金はこうやって「徐々にゼロに近づいていく」のが普通です。
アドオン金利は「減らない」と仮定する
一方のアドオン金利は、下のように仮定します。
- ★★★★★
- ★★★★★
- ★★★★★
- ★★★★★
- ★★★★★
普通金利(実質年率)の方と並べると下の通りです。
- ★★★★★
- ★★★★
- ★★★
- ★★
- ★
で、これに「利率」をかけて「利息」を出すわけです。だから、「残高」だけでなく、利息も同様に、それぞれこういう図形になるわけです。
- ☆☆☆
- ☆☆☆
- ☆☆☆
- ☆☆☆
- ☆☆
- ☆
「利息」なので、少し小さくしました。小さいですが―。
- 四角形
- 三角形
こういう違いはわかるでしょう。
- この三角形は、四角形を斜めで半分に切ったものなので、「利息半分になる」
ちなみに、これが「常に成り立つ」理由を説明します。
「返済月数」が、両方同じである
アドオン金利も、基本的に「年率」で表します。
- あなたの借金は、1年間で、これだけの利息がつきますよ
こういう意味です。そして、実質年率も同様に「年率」です。なので、先の図形でいうと、下のようになります。
- ★★★★★★★★★★★★
- ★★★★★★★★★★★
- ★★★★★★★★★★
- ★★★★★★★★★
- ★★★★★★★★
- ★★★★★★★
- ★★★★★★
- ★★★★★
- ★★★★
- ★★★
- ★★
- ★
このように「12段」に決まっているわけです。「12ヶ月」ですね。
- 「縦」の長さが同じなら、「横」の長さがすでに同じ以上、「四角形」は、必ず「三角形」の2倍になる
「横の長さ=最初の借入金額」ですからね。
アドオン金利はなぜ「低金利」に見えるのか
このように「必ず利息が高くなる」アドオン金利が、なぜ「低金利」に見えるのか。これは、最初に「利息を確定」させるからです。つまり―。
- アドオン「年利」も、普通の「年利」も、両方とも「20%」と、最初に宣言する
こういう所までは同じなのです。そして、違いはここからで―。
- アドオン…早々に「年間の利息」を確定させる
- 普通金利…確定させない。毎月、「残高に応じて」利息をとる
そのため、たとえば「100万円」借りるなら、アドオン金利の場合、下のようになります。
- 「100万円」借りるのね
- うちの利息は年間「20%」だから、つまり「20万円」の利息ね
- それを年間でもらうので、「20万円」÷12で「1万7000円」ね、月々
一見、しっかり「年率」で計算したように見えるでしょう。しかし、下のようにも言えます。
- 「12で割る」ということは、「返済回数」は12回である
- ということは「6ヶ月目」で、元本は「半分」になっている
- つまり「50万円」になっている
そして、50万円の時、「年率20%」だったら、月の利息は、本当はいくらになるのか?
年利20%なら、月利1.7%である
月利は「年利÷12」で出せます。20÷12=1.6666…なので、大体「1.7%」です。
- 借入残高が「50万円」まで減ったら、50万円にこの「1.7%」をかけたのが、その月の利息である
そして、計算すると、「8500円」となります。6ヶ月目の利息は、本当は「8500円」なのです。
そして、これを「アドオン金利」の時の利息と比較すると、下のようになります。
- 本来…8500円
- アド…1万7000円
アドオンの方は最初に、月々の利息を確定させたので、この「1万7000円」で固定なんですね。
ちなみに、「本来」の方の利息は、ここからさらに減っていきます。
一方、「アドオン」の方は、今後もずっと「1万7000円」のままです。
だから、どんどん差が開いていく(アドオンの方が、暴利を貪っている)…ということなんですね。
同じ「年利20%」で、何でこんな違いが出るのか
もう一度、アドオンの「最初」を振り返りましょう。
- 「100万円」借りるんですね。
- うちは「年利20%」なので、年間「20万円」の利息になります
こういうことでしたね。一見、何も問題ないように見えますね。たしかに―。
- この借り手が、1年間、1円も、元本を返済しない
なら、この通りになるのです。つまり利息だけ払い続けるということですね。それだったら、この計算で合っています。しかし、下のようにも言えます。
- 実際には、それはない
- アドオンの方だって、「12回で返済」のような「回数」を指定している
- ↑(法律で、指定しないといけない)
- ということは、上の計算が成り立つ
- 「ずっと元本を返済しない」ということは、ありえない
- ということは、その条件で利息を計算してはいけない
こういうことなのです。いけないから、廃止されたわけですね。
利息は「最初に確定」させるのでなく「毎月、決める」ものである
つまり、アドオンが間違っているのは利息を「最初に」決めることなのです。
- 「正しい利息」は
- 「毎月の残高」に応じて
- 「その都度」決める
- 実質年率…利息を「毎月」計算する
- アドオン…利息を「最初だけ」計算する
本来、こうあるべきなんですね。(だって、毎月残高が減るわけですから。臨時返済するかも知れないから、どのくらい減っているか、その月にならないとわからないですしね)
実際、それで今アドオン金利は原則廃止されています。(少なくとも、一般人が関わることはありません)
そして「正しい利息=「実質年率」の方は、わかりにくいのですが、これは当たり前です。「毎月、計算する」わけですからね。「最初だけ計算する」アドオン金利より、実質年率の方がわかりにくくなるのは当然なのです。
つまり、両者の違いは下のようになります。
こういう「計算の回数」の違いでもあるのです。