奨学金の返済を延滞・滞納するとブラックリスト入りする ~日数は何日から?~
奨学金の返済を延滞するとブラックリスト入りする―。これについてポイントをまとめると、下のようになります。
- ブラックリスト入りするのは61日以上の遅延から
- それまでの日数なら、よほど悪質な態度でなければ大丈夫
- 日本学生支援機構の公式サイトに明記されているので確か
以下、詳しくまとめていきます。
61日以上支払いが延滞すると、ブラック入り
日本学生支援機構では、2010年頃から61日~3ヶ月の滞納で、ブラックリストに登録するというルールを採用しています。この「61日~3ヶ月」という期間はCIC(シーアイシー)という個人信用情報機関の基準です。
いわゆるキャッシングなどのブラックリストの情報は「個人信用情報機関」という組織で管理されています。
- CIC(シーアイシー)
- JICC(日本信用情報機構)
- KSC(全国銀行個人信用情報センター)
このような3種類の個人信用情報機関があるのですが、延滞の日数に関して、ブラックリスト入りの基準を明記しているのはCICだけです。なので、日本学生支援機構もこのCICの基準を採用しているのだと思われます。
JICC・KSCなどは延滞・滞納の日数を明記していませんが、それでも、大体CIC(シーアイシー)と同じと考えてください。
奨学金の滞納は、全ての個人信用情報機関に登録される
上のように書くと「日数が同じCICにだけ登録される」と考える人もいるかも知れませんが、基本的に、奨学金の延滞・滞納のブラックリストは、すべての個人信用情報機関に登録されると考えてください。
公式サイトに日数を明記しているのがCICだけ…ということであり、実際には先に書いた通り、JICC・KSCも同程度の日数の遅延で、ブラックリストに入れるわけです。
そして、特にKSCは「全国銀行個人信用情報センター」という銀行系の借入審査に影響する個人信用情報機関なので、ここにブラックリストの記録が保管されていると―。
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- 教育ローン
- 銀行カードローン
こういったすべての銀行系の借入審査で不利になります(不利というより、5年程度は一切審査に通らなくなります)。
学生の場合住宅ローンを組むというのはかなり先ですが、自動車ローンだったらすぐにあり得ます。社会人になってすぐ、自動車ローンで新車を買う…ということも多いでしょう。
そういう時、銀行のマイカーローンを組めないというのはかなりのハンディです。また、ブラックリスト入りしている場合は銀行の自動車ローン以外でも、ディーラーローンなどの借り入れも利用しにくくなります。
ということで、JICCやCICに登録されるのももちろん怖いですが特にKSCに登録されていると、「まじめな借り入れ」でも審査に通らなくなるのでブラックリスト入りにはくれぐれも注意してください。
奨学金を完済してから、5年は審査に通らない
奨学金でブラックリスト入りした時に怖いのは基本的に「完済」してから5年~10年の期間、審査に通らなくなることです。
- 「滞納していた分」を返済してから、ではなく、「全額の奨学金を返還してから」計算する
…わけですね。つまり数百万円の奨学金全部を払ってから、さらに5年~10年ブラックリストに残るということなのです。
人によってはこのルールが緩和され、「延滞していた分を払ってから」でカウントされるかもしれませんが、基本的には「全額返済してから」のカウントとなります。
というのは、すべての借金(奨学金含む)には「期限の利益の喪失」というルールがあるからです。
「期限の利益の喪失」とは
まず「期限の利益」について説明すると、これは期限が来るまで、そのお金を借りたままにしておける権利のこと。これが喪失されるというのは貸した業者・銀行側が、いつでも一括返済を要求していいということです。
つまり、奨学金の返済に遅延した時から、日本学生支援機構はその学生に対して全額要求する権利があるわけですね。なので、そこから先は「本当は、毎月全額返済の義務がある」のと同じわけです。
しかし、当然すぐに全額返済できる人はいません。なので全額返済の義務を果たせないままその借入期間を終えることになります。
- この人は「完済するまでの間」
- 「毎月ずっと遅延していた」というのと同じ扱い
…になるのです。遅延損害金こそ発生しませんが(する場合もある)、期限の利益をなくしている以上、ルールとしてはこうなるんですね。なので基本的に、奨学金のブラックリストは「全額返済してから」の日数でカウントするのです。
奨学金の完済には、大体15年ほどかかります。もし最初の5年目でブラックリスト入りしたとしたら、そこから「10年+5年」で、15年の間、新規の借入審査に通らなくなるということなんですね。これはクレジットカードの発行などでかなり痛いことなので、くれぐれも、奨学金のブラックリスト入りだけは避けてください。
奨学金の返済は、本来遅延する方がおかしい
少々酷なことを書くかも知れませんが、奨学金というのはありとあらゆる借り入れの中でも、一番低金利なものです。これで遅延・延滞するというのは、「相当、お金についての考え方が間違っていた」ということなんですね。
この間違っていたというのはどう収入に結びつけるのか考えずに、学業を続けたということも含まれます。福沢諭吉も『学問のすすめ』にはっきり書いていますが人生に直接役立つ学問以外は、意味がないのです。
もちろん「知識を得ることによって、心が豊かになる」とか「世界が広がる」というのはあるでしょう。もちろんそれは良いことです。しかし、下のようにも言えます。
- それはあくまで「自分一人のメリット」であって、たとえば「修行僧の瞑想」と同じである
- 修行僧のような価値観を求めるなら、お金を稼げず、生涯お金のない人生を送るのも当然である
もちろん、これはこれでまったく問題ありません。自分はそういう人生を送ると決めたという覚悟がある人は、私は大好きです。学問というのは、本来そういう人がやるべきでしょう。
しかし、奨学金の返済を延滞している人は、そういうタイプではない…というのが現実ではないでしょうか。上のような「お金にならない人生」を自ら選択しておきながら「自分がこんなにお金がないのは、おかしい」と不満の声をあげている―。という風に、私には見えます。
お金のない人生を送るのが嫌だったら、お金が欲しかったら、最初から「そのための人生」を歩むべきだったのです。あるいは「途中からでも、切り替えるべきだった」のです。それをしなかった以上、奨学金の返済で苦しむのも、仕方のないことといえるでしょう。
奨学金を借りてまで、大学に進学する意味があるのか
これは堀江貴文氏のテレビなどでよく主張されていることですが、今の時代、もう奨学金を借りてまで大学に進学する価値は、ほとんどありません。少なくとも、今までのように大学を「就職予備校」として考えているなら、その価値はかなり小さくなっています。理由を書くと下の通りです。
- 大学を出ても、就職できるとは限らない
- 就職しても、月給は長年20万円や30万円止まりである
- 起業して、全部自分の取り分にした方が、よほど稼げる
こう書くと「全員が起業したら、全員の稼ぎが小さくなるだろう」という意見もあるでしょうが、もちろんその通りです。ただこうわかっていても、起業しない人がほとんどなので、この点は問題ありません。
結局、これからの日本だけでなく昔の日本もそうだったかも知れませんが、お金の世界では―。
- 生涯「労働者」として働くことを選んだ人
- それを良しとしなかった人
の2通りに分かれるのだと言えます。もちろん、前者の中には―。
- その仕事が大好きでしている人
- 誰にも負けない一芸を極めた人
- 虐待など、不遇な環境にも負けずに育った人
などもいるので、否定するのは間違っています。結局、最終的にはその人の心の状態が全てという結論になるでしょう。ただ、確かなことは「とりあえず大学」という価値観は、別に実利もないし「人として、正しい選択の仕方」でもない、ということです。大学に行くなら行くで、何か確固たる目的があるべきなのです(少なくとも、奨学金という借金まで背負っていくなら)。
奨学金は自己破産してもチャラにならない?
奨学金の返済に行き詰まって自己破産しても、チャラにならない―。というのは嘘です。これについてポイントをまとめると、下のようになります。
- 奨学金は「連帯保証人」がついていることが多い
- つまり「本人」は自己破産して借金がチャラになるが、連帯保証人の方に請求が行く
つまり自己破産しても、大体親が払うことになるというわけですね。これは「奨学金は自己破産できない」と言われるゆえんです。実際には「一応できる」わけです。
親が連帯保証人だったら、払わないといけない
上のルールを読んで「理不尽だ」と思う人もいるかも知れません。しかし、下のようにも言えます。
- 奨学金は、ありとあらゆる借り入れの中で、一番低金利である
- 「学生の支援のため」という理由で、その条件で提供されている
- この仕組みが崩れたら、その後の学生たちが困る
- だから「返済できる人」が保証人についている以上、返済しなくてはいけない
つまり、親がお金を持っている以上、それは払わなければいけないということ。「お金があるのに払わない」というのは、その後に続く学生たちの進学にも影響するのです。
一人の延滞だけだったら当然影響しませんが、一人を許せば、全員許さなければいけないのは当然。なので、一人の返済についても、ルールを緩めるわけにはいけないんですね。ルールは「全員のため」にあるものです。
日本学生支援機構もお金のない連帯保証人からも取り立てるということはありません。あくまで「連帯保証人に支払能力がある場合」のみ、督促するわけです。
なので、たとえば親もお金がないので、親も一緒に自己破産するという場合、一切の支払い義務はありません。これも別に「ひどい取り立て」というわけではなく「そういう資金繰りをしてきた」ことに問題があるのです。
動植物を殺しておいて、甘えは許されない
上のような考え方は少々厳しいかも知れませんが、それでもそもそも、生命が生きるということは、他者の命を奪うことという鉄則は理解しなければいけません。私たちが今ここで「生きている」ということ自体が動植物を殺しているのと同義なのです。
自然界の生き物は皆そうです。一見何も殺さないように見える「植物性プランクトン」だって、彼らが大量発生したら、水中の酸素がなくなって、魚がそこに住めなくなるのです。(赤潮ですね)
ということで、どんなに「殺生をしない」生命であっても「少なくとも、他の生物の繁栄を妨げる」ことは、絶対にするわけです。そして、プランクトンより上のレベルの生き物になると、食べるために直接「殺し」ます。
だから「生きる=殺す」ということなのです。そのくらい厳しい生命の世界にあって私たちは、直接動物を殺す役を、屠殺業の方々に任せて、手を汚さずにいるわけですから、かなり安らかな生活をしている方なのです。
だから「お金について真面目に考える」くらいの義務は、当然あります。それを怠った以上、学生さんにしてもその親御さんにしても、奨学金の返済で苦しむことは「自分が巻いた種」と受け入れるしかありません。
まとめ「奨学金の遅延のブラックリスト入り」
以上、奨学金の返済で遅延した場合のブラックリスト入りについてまとめてきました。最後に再度ポイントをまとめると、下のようになります。
- 61日以上の遅延で、個人信用情報に登録される
- それ未満の日数だったら、登録されない
- 登録されたら「全額返済後」から5年間、新規の借入審査に通らない
- 奨学金の完済にかかる期間は、平均で15年程度
- その途中でブラックリスト入りした場合、かなりの期間そのままになる
このように奨学金の遅延でブラックリスト入りすることはかなり恐ろしいので、くれぐれも長期の延滞をしないように注意してください。