消費者金融とヤミ金の違いは?~金利・限度額・返済などの比較~
消費者金融とヤミ金の違いは、まとめると下の通りです。
- 金利…法定金利の範囲内か
- 登録…ヤミ金も登録業者だが「年数が浅い」のが番号でわかる
- 限度額…消費者金融は数十万円が普通。ヤミ金は数万円が普通
- 返済…消費者金融は1ヶ月ごと。ヤミ金は10日ごとが基本
こうした点が違いです。以下、詳しく説明します。
消費者金融とヤミ金の金利の違い
消費者金融の金利は「実質年率」で「18%」です。これは利息制限法で決まっている法定金利です。
そして、ヤミ金の方ですが、これは特に決まっていません。もはや法律の外ですから、彼らがどんな金利にしようと、彼らの自由なのです。
ということで一概には言えないのですが、最近のヤミ金で一般的な「トゴ」(10日で5割)だと、年率「2億1841万6400%」となります。数字が大き過ぎてイメージがわかないでしょうが、もう一度、消費者金融と並べて比較してみましょう。
消費者金融 | 18% |
ヤミ金(トゴ) | 218416400% |
このように、両方数字で並べてみると、トゴというのが、いかに殺人的な暴利かよくわかるでしょう。しかもトゴというのは、今のヤミ金ではまったく普通の金利です。
かつてのヤミ金は「トイチ」だったが…
90年代など、昔のヤミ金は「トイチ」(10日で1割)の金利が基本でした。『ナニワ金融道』にも「トイチの銭田掏二朗」(せんだずりじろう)と呼ばれるヤミ金が登場しますが、作中では暴利を貪っているという表現をされています。
当時は、トイチでも十分なヤミ金だったのです。しかし、その後ヤミ金の規制が厳しくなったり、昔のヤミ金があてにしていた「利用者に、消費者金融で借りさせて、それで自分たちヤミ金の返済をさせる」という方法が使えなくなってしまったんですね。
(消費者金融の審査も厳しくなったので)
ということで、今のヤミ金は完全に「人生の墓場」に近い場所になっているのです。
- 「墓場」に来た人間なので、もう返済の見込みはまったくない
- だったら、限界まで絞りとって「人身売買」した方がいい
「人身売買」というのは、言うまでもなく
- 女性…風俗業
- 男性…マグロ船・産業廃棄物処理場での、強制労働など
男性の方はあまり知られていないでしょうが、こういう労働が待っているのです。『闇金ウシジマくん』にも「誠愛の家」という山奥の労働施設が出てきます(悲惨です)。
というように、「ヤミ金=トイチ」というのは、もう過去の話なんですね。『闇金ウシジマくん』のモデルになった「トキタセイジ氏」という実在のヤミ金の方も、『路地裏拝金エレジー』という著書の中で、そう証言されています。
ヤミ金の金利の種類・一覧
トゴとトイチだけ書いて来ましたが、ヤミ金の金利の種類を一覧にすると、下のようになります。
- トイチ…10日で1割
- トニ…10日で2割
- トサン…10日で3割
- トヨン…10日で4割
- トゴ…10日で5割
最近ではトゴをさらに超える「トナナ(10日で7割)」というヤミ金も増えている、という噂です。
ちなみに、他の金利では、江戸時代から続いている「カラス金」(からすきん)もあります。これは「一日一割」です。
なぜ「カラス」かというと朝になって、カラスの鳴き声が聞こえたら、一割の利息が発生するということですね。
さらにこれが「3倍」になって、「1日3割」の「ヒサン」という金利もあります。文字通り「悲惨」な金利ですが、『闇金ウシジマくん』の第一巻の冒頭では、パチンコのお金を借りに来た自分の収入がある女性たちに、丑嶋が「ヒサン」で貸しつけています。
ヒサンということは、単純計算で「トゴの3倍」ということ。トゴでさえ、年率で2億%以上という天文学的な金利になったのに、その3倍で、しかも複利となったらどうなるのか…。
返済など、どう考えても期待していないので、腎臓や目玉を売られる以外の未来は、考えられません(ちなみに、腎臓は1つ300万円で売れるという噂です。事実かはわかりませんが)。
ヤミ金は、実は「正規の登録業者」である
貸金業登録は、簡単にできる
実は、ヤミ金の多くは「正規の登録業者」です。理由・ポイントをまとめると、下のようになります。
- 2000年代前半までは「役所に行けば、誰でも登録できる」状態だった
- 2006年以降、登録要件が厳しくなった
- しかし、「貸金業取扱主任者」などの有資格者を、ヤミ金のグループで使い回せば、まったく問題ない
2006年以降の「厳しくなった登録要件」というのは、下のように言えるからです。
- 「貸金業取扱主任者」の資格を持つ人間を置く」j
- 資本金5000万円を持っている
などです。しかし、ヤクザの組織なら、5000万円を配分して業者をたくさん立ち上げるなど簡単ですし、貸金業取扱主任者は「名義貸し」だけにして、使い回せばいいわけです。
ということで、規制が強化された現在でも、「貸金業者登録」など簡単にできるんですね。都道府県から認可を受けた正規の業者として、今日も多くのヤミ金が、スポーツ新聞や雑誌などに広告を出しているのです。
ヤミ金が正規登録するのは、広告出稿のため
ヤミ金がこうして貸金業者登録をするのは信用度を高めるためなどいろいろな理由がありますが、大きな理由の1つが「広告出稿」のためです。
雑誌や新聞などの広告は「正規の登録業者」しか出せないんですね。(当然ですが)
逆に言えば下のようになります。
- 「正規の登録業者」
- 「広告料」を払ってくれる
この条件なら、新聞や雑誌の側としては、その貸金業者がヤミ金だろうと、知ったことではないのです。
そして、ヤミ金も広告を出せるのと出せないのとでは、集客力が全く違うので、広告のために、多少手間がかかっても貸金業者登録をするということなんですね。なので、ヤミ金は「正規業者が多い」のです。
正規業者は「紹介屋」も多い
こうして営業している「正規業者のヤミ金」は、実は―。
- 自身では融資をせず、ヤミ金にお客を斡旋する「紹介屋」
こういうケースもあります。紹介屋であれば自身は違法金利をとっていないということで、その後も堂々と正規業者として、営業しやすい、というわけです。
紹介屋の手口を流れで書くと下の通りです。
- 「超低金利!誰でもスピード融資!」などの広告で、人を集める
- 申し込んできた人に対して「○○さんの条件では、うちではご融資できません」と言う
- 「代わりに、知り合いの業者を紹介します」といい、ヤミ金を紹介する
- 上のような広告につられて来た人の場合、尻に火がついているので、大体乗ってくる
こういうやり口です。また、切羽詰まっている人は時間がないので、紹介屋やヤミ金が時間稼ぎをしているうちに、どんどん不利になって行きます。そうして、申し込み者の状況をさらに不利にして「もう、高金利でもここで借りるしかない」という状態に持っていき、半ば強引に契約させる…というのが紹介屋とヤミ金の連携プレーです。
こんなことを考えているとは知らずに「知り合いの業者を紹介します」と言われた多重債務者の方たちは紹介屋のことを「いい人」と思ってしまうんですね。
人を好きになる、人を信じるというのはもちろん大事なことです。しかし自分がどんな時も人から無条件に助けてもらえる、特別な存在だという思いあがりも、大人なら早く滑るべきでしょう。
ヤミ金の限度額は、数万円程度
回収できなくても問題ない金額で融資する
消費者金融の場合、融資する限度額は最低でも10万円から、ということがほとんど。そして、一般的な限度額は大体30~50万円です。
これに対して、ヤミ金は1万円~5万円程度の少額がほとんど。この理由は下の通りです。
- 回収できなかった時、ダメージが少ない
- このくらいでも、十分な利益が出る
- 単純に、元金(種銭)がないことも多い
こういう理由です。最後の理由を解説すると、実は、ヤミ金もよそからお金を借りて、それを利用者に又貸ししているのです。誰から借りるかというと、下の通りです。
- 消費者金融
- ヤクザ
- 地元のお金持ち(コネが必要)
- 家族・親戚
一部のうまく行っているヤミ金を除けば、実は、ヤミ金自身も資金繰りで苦しんでいることが多いので「もっと融資したいけど、2万円しか貸せない」などのケースは多いんですね。
こうしたもろもろの理由によって、ヤミ金の貸付はどうしても少額になるのです。逆に消費者金融は―。
- 資金力があるので、数十万円でも貸せる
- 代わりに低金利なので、最低10万円は融資しないと利益が出ない
このようなことで、融資枠が大きくなるわけです。
零細ヤミ金の場合「数千円」のことも
ヤミ金の中にはまったく行き場のないチンピラが、適当に始めたというケースもあります。こうした「零細ヤミ金」の実態は、『闇金ウシジマくん』でもリアルに描かれています。
彼らは審査する力も、回収する力もありません。さらに「資金力」もないため、融資するお金は「数千円」などの少額になります。とりあえず―。
- その少額を「弱い人」に貸し付けて
- 後は暴力にうったえて、その人から搾取する
このような「ビジネス」しかできないんですね。そして、そんなやり方で利益が出るはずもなく、彼らはヤミ金の中でも「底辺」に属しています。
「少額をいかに増やすか」をゲームにするヤミ金
『ザ・闇金融道』などの書籍を読むと、ヤミ金の一部は少額のお金を貸し付けて、それをどこまで増やすかという「ゲーム」を楽しんでいることがわかります。つまり、「1万円を貸して、そこからどれだけの利息を絞りとるか」というゲームです。
実際、これを仲間のヤミ金とかけて勝負していることも多いようです。人間、ある程度仕事に慣れて、レベルが上がるとやはり「遊び心」が入ってくるもので、彼らの「遊び心」はこの「搾取ゲーム」のようです。
「少額の借り入れが、莫大に膨らんだ」ケースとしては、一番有名なのは八尾市ヤミ金心中事件です。夫婦と義兄の三人が、ヤミ金への返済苦から鉄道自殺をした2003年の事件です。
この事件では、わずか1万5000円の借金で、1ヶ月程度で「15万円」を返済し、しかもまだ返済が終わらないという状態でした。他からの借り入れもあり、三人は心中されてしまったのですが、生きてそのまま返済していたら、一体いくらの利息総額になったかわかりません。
「ゲーム」をしているヤミ金の人たちも、この事件は当然知っています。ヤミ金の中には意外と「普通」な人も多く、最初は良心の呵責があるようですが、「だんだんと平気になっていく」ようです。
たとえば、看護師のお仕事をしていると、女性の看護師さんでも、男性器などを見るのがまったく平気になっていくようです。人間は、毎日見るものにいちいち驚いていると脳が疲弊するので、無意識のうちに「何も感じないように」なっていくんですね。
だから、こう言う恐ろしい「闇金のゲーム」も生まれるわけです。
ヤミ金は「10日ごと」の返済が基本
消費者金融の返済は「1ヶ月ごと」が基本だが…
返済ペースで比較すると、下のようになります。
- ヤミ金…10日ごと
- 消費者金融…1ヶ月ごと
それぞれの理由は下の通りです。
- ヤミ金…短期間でチェックしないと、逃げる人が多い
- 消費者金融…1ヶ月程度にしないと、管理コストがかさむ
また、ヤミ金の場合は、10日でもかなりの利息なので、このくらい小まめに回収しないと、自分たちの収支が安定しないわけです。「回収できるかどうかわからない金額」は、できるだけ小さい方がいいですからね。
回収不能になるならなるで「早くわかった方がいい」わけです。それをハッキリさせるためにも、短期間での回収をルールにしているんですね。
消費者金融はいつでも自由に返済できる
消費者金融は月1回と書きましたが、これは絶対に返済しないといけない、約定返済日のこと。自主的に臨時返済する分には、いつ返済してもかまいません。
これに対して、ヤミ金は「臨時返済は認めない」というのが基本です。1日でも早く返済されると、それだけ利息が減るからです。シンプルな理由ですね。
もちろん、彼らはこんな理由は言わず―。
- 「うちは大手と違って人数も少ないしさ。それでたくさんのお客の返済を受け付けてるから、臨時の受付とかできないんだよね」
- 「だから、臨時返済してもらってもいいけど、利息はきっちり10日分とるよ?」
このように、利用者に説明します。もちろん、この場合は「10日分取られてもいいので、さっさと返済する」方がいいです。
ヤミ金は、返済日に居留守を使うことがある
ヤミ金としては「返済してくれない」方がありがたいわけです。まだ「取れる」人の場合は、ですが。
そして、そういう場合は約束の返済日に事務所を訪れても、居留守を使うということがあります。あるいは事務所でなく電話のやり取りの場合「電話に出ない」などです。
そして、それが原因で返済できなくても、翌日「山田さーん。昨日返済日だったよ。どうしたの」などと言うわけです。そして「遅延損害金」を要求してきたりします。
すべてのヤミ金がここまで悪質とは限りませんが、こういうヤミ金は結構いるので注意してください。(というか、そもそもヤミ金から借りてはいけませんが)
ヤミ金のこのような「ルール」を知ると、「いつでも自由に返済できる」という消費者金融が、いかにありがたい仕組みかよくわかるでしょう。
まとめ「消費者金融とヤミ金はまったく違う」
以上、消費者金融とヤミ金の違いをまとめましたが、金利・限度額・返済などのすべての面においてヤミ金と消費者金融は、まったくの別物ということがよくわかるでしょう。
両者がたまに混同されるのは、2006年頃の「消費者金融バッシング」で、ヤミ金が起こした事件まで、消費者金融が起こしているかのように報道したメディアに原因があります。
実際、先に書いた「八尾市ヤミ金心中事件」も「消費者金融がらみの事件」と思っている人は、いまだ多くいます。「アイフルの脅迫テープ」が無実だったこと(最高裁で無罪判決)も含めて、ヤミ金と消費者金融が混同される原因は、メディアにあるのです。
ということで、両者は完全に別物なので、消費者金融は危険視しなくて大丈夫です。もちろん、借り過ぎはよくありませんが、ヤミ金のような暴力的な行為、反社会的な行為などはない…と思ってください。