奨学金の返済を遅延・延滞すると、キャッシングができなくなる
奨学金の返済を延滞すると、キャッシングできなくなります。ポイントをまとめると、下のようになります。
- 「3ヶ月以上」の遅延で、ブラックリスト入りする
- 「奨学金すべてを返還」してから5年は、新規の借入審査に通らない
- キャッシングだけでなく、住宅ローンなどすべての審査で不利
以下、詳しくまとめます。
3ヶ月以上の延滞で、ブラックリスト入りする
本来の支払日から「3ヶ月経っても払わない」とアウト
奨学金は「3ヶ月連続で延滞」すると、ブラックリストに登録されます。
- 「1月」に返済するはずだった分を、「4月」になっても、まだ払っていない
こういう状態ですね。たとえば、「数日遅れの遅延」を「3回」繰り返したというのは、別にブラックリストには入りません。(日本学生支援機構の中では、社内ブラックというか「要注意人物」になるでしょうが)
ちなみに、これが普通のキャッシング業者の場合「2ヶ月の遅延を3回」というケースでも、ブラックリストに登録されることが多いです。しかし、「日本学生支援機構の場合、それは大丈夫」と考えてください。
「3ヶ月以上」と明記している以上、こういう公的な団体は、その基準はきっちり守ります。よほど悪質な利用者でなければ「3ヶ月連続の延滞」をしない限り、まず大丈夫と思ってください。
普通のキャッシング業者の場合「61日以上」
奨学金のこの「3ヶ月以上から」という条件は「かなり優しいもの」です。普通のキャッシングの場合「61日=2ヶ月」以上遅れるとブラックリスト登録という業者・銀行が多いです。
つまり、たまに「奨学金の取り立てはサラ金並み」と言われたりしますが、そんなことは全然ないんですね。サラ金…つまり消費者金融であれば「61日の遅延」で、とっくにブラックリスト入りしているのです。
奨学金の延滞に関する記録は、あくまで多重債務防止のためです。奨学金を返済できない理由の中に「他での借入金の返済のため」というものが多く、「延滞者の中に、かなりの数の多重債務者がいる」ということがわかったからです。
そして、同じように「低収入で働いている」人たちが多くいる中で、これらの人だけ多重債務者になってしまう理由は、やはり「借金に対する抵抗が薄い」からなのです。本人の抵抗感が薄いなら、せめてブラックリストに入れて、借りにくくするしかないわけですね。しかないし、それが一番いいわけです(本人のためにも)。
奨学金の延滞者が個人信用情報に登録されるのは、そういう理由です。そして、条件としても「3ヶ月」というのは「十分な温情措置」なのです。
ブラックリストに入ると、どうなるのか?
ブラックリストに入ると、下のようになります。
- 延滞の場合「5年間」、新規の借入審査に通らない
- 銀行カードローン・クレジットカード等ほぼすべて借入不可
- 「最長5年」なので、もっと短い場合もある
- 奨学金の「全額の返還が終わってから」でカウント
ここで一番怖いのは奨学金の「全額」の返還が終わってからということでしょう。
奨学金の返還にかかる期間は、平均で「16年」なので、たとえば返済し始めてから「5年目」にブラックリストに入ると「それから16年、ブラックリストに入ったまま」ということになります。
ものすごい長期間ですが「奨学金というのは、そのくらい巨額の借金」ということを意識してください。
奨学金の返済には、平均何年かかる?
毎月1.5万円の返済で、平均16年かかる
マイナビスチューデントの統計をまとめると、下のようになります。
- 平均借り入れ金額…288万円
- 平均返済年数…16年
で、計算すると下のようになります。
- 16年=192ヶ月
- 288万円÷192ヶ月=1.5万円(ちょうど)
このようなことで毎月1.5万円の返済で、16年かかるというわけですね。
返済している人たちの体験談を調査すると…
実際に返済している方・完済した方の体験談も、見てみましょう。匿名サイトなので、あくまで参考程度ですが―。
- 「大人数が同時に嘘をつく」ことはまずない
- 「一人で自作自演の嘘を大量に書く」のも難しい
そのため、ある程度は信用していいと思います。ということで「ガールズちゃんねる」の下のトピックから、返済期間や金額の参考になるものを、抜粋させていただきます。
http://girlschannel.net/topics/230351/
- 「月1万円」で10年
- 「年に一度30万円」であと10年(合計何年か不明)
- 社会人3年目、月々7000円返済(何年かは不明)
- 社会人5年目、月3万円返済
- 月1万3000円の返済で、10数年かかる予定だったが、↑繰り上げ返済して、3分の2の期間(8年くらい?)で完済
- 「月2万円」で10年(無利子)
- 夫…月2万4000円(無利子)、妻…月8000円(有利子)
- 毎月1万5000円、16年で完済予定(あと9年)
「年に一度30万円」という例外はありますが、ほとんどの人は「月7000円~3万円」で「8年~16年」くらいで返済している、ということがわかります。
毎月これだけの金額を、コンスタントに10年前後払い続けるのは、意外と大変です。特に―。
- 就職できなかった
- 就職して、すぐにやめてしまった
こういう人の場合、返済はかなり苦しくなるでしょう。3ヶ月以上の延滞をする方は、これからさらに増えると予想できますが、先にも書いた通り、こうした長期延滞はかなりのマイナスになります。
(もちろん、そんなことは延滞する人もわかっているでしょうが…)
返済に専念すれば、もっと早く完済できる
「毎月1.5万円で16年」というと「かなり大変」と思うでしょう。しかし、奨学金の返済がこれだけ長引く理由は、いくつかあります。
- 「貯金」している
- 「自動車ローン」などを組んでいる
- 「結婚式」などで出費している
- その他「買い物・旅行」をしている
要は下の通りです。
- お金を使っている
- 「他の借金」も増やしている
こういうわけですね。「当たり前じゃん」と思われるかも知れませんが、この生活を当たり前と思っているから、奨学金を借りている人の大部分が、返済に困っているともいえます。
冷静に考えれば「奨学金は借金」なのです。もしこれが「消費者金融」の借り入れだったら下のようになります。
- 借金しているのに、海外旅行に行く
- 借金しているのに、「他の借金」をする
こういうのは、明らかにおかしいと感じるでしょう。
- 奨学金
- 自動車ローン
- 住宅ローン
- クレジットカード(のショッピング)
これらは借金をしているという意識がないので、非常に危険なのです。
- 「借金と思ってない借金=奨学金」の返済中に、「借金と思ってない借金=自動車ローン」などを追加する
ことで、どんどん資金繰りが厳しくなっていくわけですね。
奨学金も、自動車ローンも、住宅ローンも、クレジットカードも、全部借金であるという当たり前の事実に気づけば、こんな「非合理的な行動」は、誰も取らないはずなのです。
まとめ「長期延滞でなければ多少遅れてもOK」
「ブラックリスト入りを防ぐ」ことは簡単
ここまでの内容を読んで「奨学金の返済って地獄だな…」と思った人もいるかも知れません。確かにその見方も正しいですし、私もそう思うので、これから大学に入る人に、奨学金はおすすめしません(というより、大学進学自体をおすすめしません)。
しかし、こと「ブラックリスト」については、要は「3ヶ月以上の長期延滞」さえしなければいいわけです。常識で考えて「3ヶ月以上遅れる」というのは、かなりの遅延です。
(先にも書いた通り、普通のキャッシングだったら「2ヶ月でブラックリスト」なわけですから)
なので、多少低収入であろうと、奨学金の金額が大きかろうと、「ブラックリストに入らない程度の、最低限の返済」はできるはずなんですね。「ゼロか100か」で考えるのではなく「とりあえずギリギリで返済して、20点や30点をゲットし、赤点を免れる」くらいに考えればいいのです。
借金返済で行き詰まる人は「まじめに考えすぎる」
かつて7000万円の借金を背負い、それを債務整理で2000万円まで減らし、完済した吉田猫次郎氏。『借金力』『ブラックリストなんて怖くない』など多くの「借金本」があります。
(減らしてもまだ2000万円あったというのがすごいですね…。)
そして、この猫次郎氏が著書の随所で書いていることの1つに借金返済を、あまりまじめに考えすぎないということがあります。ポイントをまとめると、下のようになります。
- 「少しでも遅れてはいけない」と思うと、消費者金融から借りる、ヤミ金から借りる、というように、奨学金よりもリスクのある借り入れを、どんどん増やしてしまう
一方「適当に考えている人」は―。
- 「奨学金の督促は、それほど厳しくない」と考え、とりあえず「落ち着く」
- 返済できないとストレスが増える、クレジットカードなどを先に返済する
- 金欠状態を抜け出たところで、奨学金も返済する
- 個別の時期で見れば問題があったが、全体としては「大体」うまく行っている
このような状態で返済していきます。つまり100点ではないが、50点をコンスタントに取っているということです。
「返済を気楽に考える」心構えは、人生全般に通じる
上に書いた気構えの違いは、「プロ野球選手と、高校球児の違い」でもあります。たとえばピッチャーが打ち込まれた時、それぞれどう考えるかというと、下の通りです。
- 高校球児…どうしよう。ここで打たれたらもう終わりだ
- プロ選手…あー、めんどくさ。ここでバテると完投できんな。1点取られてもいいから、体力温存しよう
このような感じです。プロ選手の方が「ある意味いい加減」なんですね。
こう書くと「高校野球は一発勝負だから仕方ない」と思うでしょう。しかし「彼らは負けても、別に路頭に迷うことはない」のです。
しかし、プロの選手は路頭に迷います。本来「プロの方がプレッシャーがかかるはず」なのです。
なのにこのように「気楽に」やっているのは長期的に見ると、そっちの方がいい結果がコンスタントに出せるというのを知っているからです。サッカーの三浦知良氏(カズ)も、プロの条件を「常に一定の調子を維持できる人」と、中日新聞のコラムで書いていました。
このように、少々スポーツの話が多くなりましたが、要は人生全般で、このように「良い加減」でやっていくのがいい、ということです。
参考文献&サイト一覧
- 日本学生支援機構「奨学金の返還促進に関する有識者会議」(2008年6月10日)
- http://www.jasso.go.jp/seisaku/documents/sokusinsaku.pdf
- この会議で「奨学金の延滞者は、個人信用情報に登録する」方向が決まったことがわかる
- ただし「奨学金の審査に関して、個人信用情報を使うことはない」ことも書かれている
- (つまり、延滞が起きた分を「一方的に、CICなどに報告するだけ」ということ)
- マイナビスチューデント「4割以上の人が活用した奨学金、返済額は平均288万、完済までは約16年」
- https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/11643
- 2014年3月卒業の内定者379人に実施した、アンケート結果
- ガールズちゃんねる「奨学金の返済はどのようにしてますか?」
- http://girlschannel.net/topics/230351/
- 奨学金を返済中 or 完済済みの方々の体験談
- 吉田猫次郎の「壮絶!体験記」~私の借金脱出日記~
- http://www.nekojiro.net/history.html
- 最大で7000万円あった猫次郎氏の借金が、どのように完済に至ったかの歴史がわかる
- 吉田猫次郎(2005)『ブラックリストなんて怖くない』宝島社
- 多重債務者・債務整理をした人たちの体験談が集まっている
- ↑(猫次郎氏のサイトに寄せられた投稿から選んだもの)
- これを読むと「借金返済をあまり真面目に考えない方がいい」ことが、よくわかる
- ひろさちや(2005)『デタラメ・あきらめ・いい加減―仏教に学ぶ幸せな生き方』ソニー・マガジンズ
- 「いい加減」は本来、仏教でいう「良い加減」である…、という語源・由来・出典がわかる